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横断歩道の白と黒の間

セクシュアルマイノリティの人が書くブログ

【再掲載】 小説 2

小説

hinata1130.hatenablog.com

 

さっそく、ああ、失敗した、と思っている僕です。

 

もう少し、先輩のストーリーをひろげるべきだった。

 

起の部分が短すぎた。

 

一章を同性愛について

 

二章に性同一性障害について

 

くらいのスパンで考えればよかった。

 

早速嫁しゃんに読ませたら

 

盛り込みすぎ。

 

早漏か。

 

とか言われてないです。

 

一日迷って、とりあえず、話を元に戻す方向で行くことに。

 

それでは続きをどうぞ。

 

ちなみに、前編もちょっと言葉をいじったりしています。

 

アドバイス大歓迎です。

 

▼▼▼

「それじゃあ、レズくらいじゃ驚かないね。」

 

ここでようやく私は、先輩の決死の覚悟を踏みにじってしまったことに気がついた。

 

「すいません。先輩の話でした。なんで、私に話してくれたんですか?」

 

なんとなく、気になっていたことを聞いて、バトンを先輩に戻すことにした。

 

「いやいや。気にしないで。うーん。なんでだろうね。なんとなく、何か言ってもいいかなって。言わなくても、いいことだけど。こんなこと、言われるほうが困るじゃない。だから、本当は自分の中だけで完結していればいいことなんだよね。」

 

壁に貼られたメニューをひとつひとつなぞるように眺めていた先輩が自分に言い聞かせるように呟く。

本当の理由は別にあるのだろう。

 

『同性愛者であること』

 

無宗教という宗教の信者が一番多いこの日本で、同性愛は大罪ではない。
幸いなことに法律でも禁止されていない。
なぜなら、「同性愛者」は存在していないからだ。
差別なんてない。だって、同性愛者はこの日本に存在していないのだから。
マンガやどこか遠くの海外のお話。
私たちは、保健体育の授業で「思春期になると、異性を強く意識するようになります」と習う。
マセた子どもはすでにその頃には2,3個の恋は経験済みで、同性愛者は、当たり前のように同性に恋をする。
異性愛者がごく自然に異性に興味を持つように、同性愛者は同性に興味を持つ。
ある日突然、同性愛者になるのではない。ある日突然性別が変わらないように。

 

「どうして、カミングアウトなんていう言葉が出来てしまったんでしょうね。」

 

同性愛者は、社会に対し「私は同性愛者です」と宣言する決まりになっている。実際そんな決まりはないのだけれど、宣言することをカミングアウトといい、宣言しないことをクローゼットという。宣言する、しないの言葉がある以上、その行為に意味がうまれる。異性愛者が「私は異性愛者です」と宣言しなくとも、それを前提に社会が回っている。『そうではない者』は『そうでない者』と宣言しなければ、『クローゼット』であるというのは、『そうでない者』であるからなのだろう。同性愛者は『異質』なのだ。社会の前提の中に、存在していないはずなのだ。

 

「この間さ、実家に帰ったじゃない?私もそろそろ観念して、結婚しようかなって思ってさ。」

 

大型連休に、最後の独身仲間が結婚するとかで帰省したお土産に日本酒を頂いたのを思い出した。

 

「あぁ。あの日本酒、とってもおいしかったです。ご馳走様でした。んー…ってことは女の人と結婚するんですか?」

 

ふざけた質問だ。日本では現在、同性同士での結婚は認められていない。
日本国憲法第24条には、
1.婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
と明記されている。この両性というのは「男女」と考えるべきであるという主張と、そもそも、結婚というのは、当人の意思を無視して勝手に決めてはいけませんということを前提に定められた法であるため、この両性というのは、便宜上「当事者の二人」という意味である、ゆえに両性には同性を含めることが出来るという解釈の主張がある。
どちらにせよ「同性愛者」は想定されていなかったのである。
憲法にさえ、存在を消されているのである。

 

「そうねぇ。カナダがいいかな。ハワイがいいかな。冬だし、カナダは寒いからハワイがいいかなぁ。」

 

結婚が認められていない日本で、異性愛者の婚姻と同じように契りを交わすために、国籍を問わず婚姻の証明をしてくれるカナダやハワイで文字通り結婚する同性愛者は少なくない。

もちろん、その婚姻は日本国内での法的拘束力は一切ない。

現在、同性結婚が法的に認められている国は30カ国。先日、アメリカ連邦最高裁判所同性婚を認めないことは違憲であるという判決を下し、アメリカ全土で同性結婚が認められたことは記憶に新しい。

 

「なんてね。男性と、さ。これでも私、モテるんだよ?」

 

自虐をこめていたずらに笑う先輩の目は笑っていなかった。
結婚したい男性がいるとか、そういう類の積極的な意味ではないのだろう。
大方周りが結婚し、出産ラッシュを迎え、精一杯仕事に傾けてきた情熱は一切評価されず、「女にとって結婚して出産して幸せな家族を築くことこそが最大の幸せ」という物差しによって叩き続けられることに疲れたのかもしれない。

 

 

「先輩はそれでいいんですか?」

 

「いいとか、悪いとか、そんなことも言ってられない気がするしなぁ。」

 

「弱気ですね。男の人と付き合ったことあるんですか。」

 

「ん。一応、学生の頃に、あるよ。」

 

先輩は気まずそうに、視線をグラスに戻した。

その横顔が、あまりにも無垢でまぶしすぎたので

少し、意地悪を言いたくなった。

 

「先輩、もしかしてそれ、周りが彼氏をつくってるし、自分も作らないといけないのかな、でも恋とかよくわからないし…なんて思ってたら、サークルの男子が告ってきて、いい人だし、話し合うし、一緒にいて楽しいし、付き合ってみればわかるのかな、なんて付き合ってみたものの、友達の時と違って何が気まずいし、楽しいのかわからなくなって、友達以上のことなんてできなくて、でもいい人だしってズルズル付き合った結果、『お前、俺のこと好きじゃないだろ?』ってすごく悲しそうな顔で笑って振られた、とかそういうヤツですよね。」

 

なんでわかるの!?という顔して先輩は固まっている。

図星だったのだろう。そうやって、社会に適合してみようとする同性愛者は珍しくない。

 

「その顔は、図星ですか。ヤッたんですか、その佐藤くんと。」

 

先輩がふきだす。

 

「佐藤じゃないし。堀田だし。ヤリそうにはなったんだけどね。全然、ダメでね。ほら、堀田くん、いい人じゃん?今日はやめておこうかって。それから、なんとなく、そういう風になるの避けるようになって。それで、まぁ…ね。」

 

「いい人かどうかは知りませんけど、堀田、童貞ですね。チキン野郎ですね。先輩は、いつ自分がレズビアンだって自覚したんですか?」

 

「ちょっとぉ。堀田くんの悪口言わないでぇ。」

 

わざとらしく頬を膨らました先輩は、私の肩を軽くたたいた。とても楽しそうだ。わけがわからない。

 

「初恋は、幼稚園のミサコ先生。小学校の時は近所のマナミお姉ちゃん。中学の時はミカ先輩。それでも私は、それを恋だとは思わなかった。恋というのは、男女間にあるもので、私のこの気持ちは、恋ではなくて、母親への愛情とか、あんな風になりたいなっていう憧れとか、そういう類だと思ってた。」

 

まるでその場にいるかのように、一人一人の名前を丁寧になぞっていく。一人ひとり大事な思い出として、また大切な人として心に刻まれているのだろう。

 

「年上好きなんですか?」

 

そういえば、先輩の好みを知らなかった。それ以前に、当然のことだが、先輩といわゆる恋バナをするのは5年一緒に働いていて、初めてのことだった。

 

「好きだねぇ、年上。」

 

はにかんでいる先輩を見るのは、二重にかかった虹を見るくらいのことかもしれない。

 

「でも、それを恋だとは思わなかったんですよね。」

 

思わず見惚れてしまいそうだったので、頭をフル回転させる方に集中させた。

 

「うん。思わなかったね。だって、恋は男女のもので、『同性間にあるはずがない』ものだと信じていたから。だから、恋というのはいまだ私の知らない何かだと思っていたよ。」

 

同性愛者が、「私は同性愛者である」と自覚するタイミングというのは、それぞれの人生において、それぞれのタイミングなのだ。先輩もまた、先輩の人生のタイミングで、それを自覚する。

 

「それがいつ、恋だと気が付くんですか。」

 

「大学の時。告白されたんだ。なんとなく、押し切られちゃって、付合ったの。」

 

「ははーん。なるほど。まぐわって、先輩はようやく恋というものを自覚し、自分がレズビアンだと認めるようになるわけですね。」

 

無言で、肩をたたかれる。さっきよりも強く。

 

「痛いです。本当に痛いです。それまで、レズビアンだって自覚がなかったのに、よく付合おうと思いましたね。」

 

自分の肩を撫でながら、先輩に顔を向けた。

何かを思い出しているのか、手で顔を仰いでいた先輩は、その手を空に残したまま、左上を見つめている。

 

「最初はね、女の人と付合うって、どういう事なんだろうって、思ったよ。それっておかしくないのかな、とも思った。変態なのかな、とか。」

 

異性愛ロールモデルは、幼少期から、少女マンガドラマや映画、小説に至るまで、どこででも手に入れる事ができる。中学生でも、高校生でも、大学生でも、大人でも、結婚してからでも、いくつになっても、異性愛ロールモデルは世間にあふれていて、その情報を手に入れる事は容易い。しかし、同性愛のロールモデルは、どこにもない。

 

「男性に恋をした事がないし、付合ったのだって堀田くんだけだったし。デートとかしても、女友達と遊びにいくのと、何かが変わるわけじゃないし。朝までかかって課題やったり、同じ布団で寝たり、さ。これが付合うってことなら、友達との違いは何だろうって思った。」

 

「今までの年上に抱いていた感情のようなものは、その人には抱かなかったんですか。」

 

「あったと思う。だから、付合ったんだろうな。でもそれが恋心だとは思わないから、どうして良いのかわからなかったな。」

 

「恋すら、わかってないんですもんね。で、いつわかるんですか、その恋心とやらは。」

 

「えっと、付合って割とすぐに授業で大きな課題があって。その提出が終わった日に、打ち上げしようって、私の部屋で、二人でお酒を飲んだの。私、一人暮らしをしていたんだけど。いわゆる宅飲みっていうやつ。テレビとか見ながら飲んでて。アオイはあんまりお酒が強くなくてさ。寝ちゃったんだよね。アオイの寝顔を見てたらさ、なんかすごく......きれいだなって思って。不意に、ね。」

 

「チューしたんですか。」

 

今度は肩をどつかれた。思い切り。

 

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